翻訳

AI翻訳とのおつきあい

機械翻訳は数十年前から存在していますが、その技術は時代とともに進化の一途をたどっています。2016年には人工知能(AI)を用いた新たなニューラル機械翻訳(NMT)がGoogleに導入され、機械翻訳の質が格段に向上しました。

産業翻訳の世界でも、医療、金融、化学などそれぞれの専門分野に特化したAI翻訳のソフトが開発され続けています。私が携わっているのは医薬翻訳ですが、AI翻訳を用いて仕事をする機会も徐々に増えてきました。

そんなわけで今日は、AI翻訳について知ったことや思うところをまとめてみます。

AI翻訳の優れた点

AI翻訳は、数ページにわたる長文でも数十秒~数分で訳してくれます。もちろん人の手による修正は必要ですが、8~9割方正確に訳されている場合、一から訳すよりもずっと短時間で納品することができます。

そのように正確な訳出がなされる文章は、ある程度パターンの決まったフォーマットの文章や論文などに多くみられる傾向があります。

また、人はしばしば思い込みやフィルターが邪魔して、文章の意味を歪めて受け取ってしまうことがありますが、AIはそのような偏見がないため、こちらの歪みを修正してくれることもあります。

人の手が必要な文章

上記である程度パターン化された文章と述べましたが、逆にあらゆる立場の人がフリースタイルで書いた文章の場合は、人による翻訳が必要だと感じています。

例えば、患者さんが腹痛を訴えているという内容の文章があるとします。同じ腹痛でも、人によって表現方法はさまざまで、「腹痛がある」、「お腹が痛い」、「お腹がずきずきする」、「胃腸のあたりがしくしくする」、「ハラ痛いねん」などなど、言い方は十人十色です。

そのうえ、前後の状況から照らし合わせて書き手の真意を汲み取り、それをいちばん的確に言い表すことのできる言葉を見つけてくる必要があります。そんな風に毎回状況や文脈が変わる文章の翻訳は、人の方が得意だなあと思います。

AIが翻訳の仕事を奪うことはあるか

私は翻訳の仕事がAIに奪われることはないと思います。AIの技術は著しく発達していますが、AIのみで完結させるのは無理があり、どうしても人のチェックが必要になります。

また、話の背景や文脈から意味を汲み取ったり、文法が破綻している又は省略が多い文章を補ったりして訳す作業は人でなければできないのではないでしょうか。

奪う奪われるの図ではなく、AIが得意とする箇所を助けてもらうことで、質の高い訳文を練り上げることができるのではないかと。ライバルではなく、協力し合う相棒のような存在になっていくのではないかなと思います。実のところ、最初はAI翻訳に敵意のようなものを感じていたのですが、最近ではそう思えるようになりました。

最後に

AI翻訳の発達は本当に素晴らしく、人間が書いたのかと見紛うほどの訳もよく見かけるようになりました。同時に、文章はただ言葉を羅列したものではなく、込められた人の気もちやその時々の状況、背景にある条件などで形を変える、柔らかい生き物のようなしちめんどくさい(だからこそ魅力的な)ものなのだという実感も新たにしました。

AIの発達に負けないよう、私ももっと読解力や専門的知識、表現力などの翻訳力を磨いて、翻訳の沼に沈みたいなあ、と思う日々です。

それでは、今日はこの辺で。最後まで読んでくださってありがとうございました。

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